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VO.2【プレスキル】本質を見極め、新たな伝統を生み出す



料理を芸術に昇華したフレンチの新しいスタイル


 ヌーヴェル・キュイジーヌ。フランス語で「新しい料理」。それまで主流だったオートキュイジーヌに対するカウンター概念として1970年代に誕生した、フランス料理の新しいスタイルです。宮廷料理を基盤とするオートキュイジーヌを発展させたヌーヴェル・キュイジーヌは、現代フランス料理の源流ともいわれています。シンプルを旨とし、味覚のみならず視覚から感じられる完成度にもこだわるそのクオリティは、料理を「芸術」に昇華させたという意味でも、エポックメイキングなムーブメントでした。伝統的な手法をただ受け継ぐだけではなく、柔軟な発想で未知の調理法も積極的に取り入れる考え方が、ヌーヴェル・キュイジーヌの特徴の一つ。フランス料理界がこのような姿勢を打ち出すに至った経緯には、議論の余地を残しつつも「和食による影響があったのではないか」と考える専門家も少なくありません。

 約半世紀にわたって連綿と受け継がれてきたヌーヴェル・キュイジーヌの歴史をひも解けば、おのずとアラン・シャペル氏にたどり着くでしょう。フランス・リヨンに生を受けた稀代の料理人である彼は、このスタイルを牽引した代表的な料理人の一人です。そして、日本に目を向ければ彼の愛弟子である国内フランス料理の第一人者・上柿元勝氏の名も浮かび上がります。今回ご紹介する大阪・淀屋橋のPRESQU'ÎLE(プレスキル)は、2人の系譜を受け継ぐ全国屈指のグランメゾンです。



見事なペアリングが、垣根を軽やかに飛び越える


 「PRESQU'ÎLE」とは、美食の街として知られるフランス・リヨンにある、新市街と旧市街が交わる地区の名称です。厨房で腕を振るうのは料理長の佐々木康二さん。上柿元勝氏から薫陶を受けた、アラン・シャペル氏の孫弟子にあたる人物です。訪れる人々は、リヨネーズ(リヨン地方の郷土料理)をベースとしたオリジナリティあふれる逸品の数々に感嘆しきり。オードブルからメインディッシュまで、繊細かつ彩り豊かな、風格さえ感じさせるメニューが次々と供されます。コースの締めくくりに登場するワゴンサービスのデザートも秀逸です。美しく華やかにデコレートされたミニャルディーズ(小菓子)たちは、さながら宝石のよう。いつまでも余韻が冷めない極上のひと時を演出します。

 日本最古のワイナリー「まるき葡萄酒」が手掛けるワインとのペアリングを堪能できることもPRESQU'ÎLEの魅力の一つ。考案されるメニューは「料理ありき」ではなく、「お酒に合わせる」ことを前提としています。そんな同店の佐々木シェフにペアリングをお願いした1本は、SUIGEI HIGH END COLLECTION《万》。口に含み喉を通した印象を、シェフは次のように言葉にされていました。

 「クセがなくまろやかさが際立ちますね。この飲み口であればどちらか一方が主役になるのではなく、お酒と料理のどちらも引き立てられる、というのが率直な感想です」

 では、果たしてどんな料理でペアリングを表現するのかと続く言葉を待っていると、「調和」「旨み」という、2つのキーワードを教えてくださいました。

 テーブルに運ばれた一皿は、Petits ragoût de poissons et crustaces (魚介類の軽い煮込み)。食材は金目鯛やオマール海老、ホタテ貝、タマクエなどの海の幸と、ポワロ―、アーティショウ、フヌイユといった西洋野菜がふんだんに使われています。これらの素材が持つ旨みは特製のフュメ・ド・ポワソン(魚のダシ)によって渾然一体となり、実にやさしく穏やかな仕上がりに。さらりとした口当たりや調和の取れた旨みは、フュメに加えられた和の食材が一役買っています。その正体は「特別吟醸の白味噌です。フュメをつくる最後の段階でほんの少しだけ足し、全体的な濃度を調整しながら風味を整えました」と、佐々木シェフ。焼き目を入れたアラによって香ばしさもまとう琥珀色のフュメを食材と共に口に運ぶたび、じんわりと旨みが増していくような奥行きのある味わいを感じさせてくれます。料理をひとしきり楽しみグラスを傾けると、《万》のまろやかさがさらに引き立ち、そのまろやかさが料理の旨みをまた一段高みへと。佐々木シェフによる実に見事なペアリングは、フランス料理の枠組みを軽やかに飛び越えていきました。





プロとしての矜持は、基本に忠実であること、継続すること


 料理人として大切にしている心掛けを佐々木シェフに伺うと、「厨房を常に美しく清潔に保つことです」と、明確な答えが返ってきました。衛生管理の徹底が何より大切という意識は、修業時代に師である上柿元シェフと過ごした日々の中で身についたものです。

 さかのぼることおよそ40年前、神戸ポートピアホテルの開業と同時にオープンした「アラン・シャペル」の厨房が2人の居場所でした。上柿元シェフは副料理長を務め(のちに料理長となる)、佐々木シェフはまだ駆け出しの頃。リヨンの本店さながらに整えられた厨房設備を目にして、若き佐々木シェフはただただ圧倒されます。

 「床も調理台も隅から隅まで磨き上げられており、掃除の際はどんな小さな汚れも見逃すまいと懸命でした。当時の経験はかけがえのない財産です」道具にこだわりを持ち大切に扱うことも、師の背中から学んだことでした。例えばフランス料理に用いる鍋は、アルミ製より銅製のものがより重宝されるのですが、その理由は熱伝導効率と蓄熱性に大きな差が生じるため。熱を蓄え逃がさないことで、フランス料理のソースは、はじめてルセット通りのクオリティを維持することができるのです。同じものをメンテナンスしながら何十年と使い続ける料理人もそう珍しくはありません。佐々木シェフの人生哲学は至ってシンプル。基本を忠実に守り、いかなる状況においても継続すること。その積み重ねが今の自身を形作るという信念は、決して揺らぎません。



不易流行。普遍と変化は表裏一体


 すべての食材と生産者に感謝を。今のように地産地消が声高に叫ばれるより以前から、上柿元シェフは土地の食材に根差した料理を提唱し続けていました。佐々木シェフの料理観にも大きな影響を与えています。

 フランスであれ日本であれ、今であれ昔であれ、土地に根づいた食文化を大切にしたいという気持ちは、誰もが抱くごく自然な感情といえるでしょう。素材のポテンシャルを引き出すこと、生産者の想いに寄り添うこと。佐々木シェフが考案するメニューには、歴史への敬意、土地への愛情、関わるすべての人への感謝が溢れています。とはいえ、従来の伝統をただ踏襲するわけではありません。ヌーヴェル・キュイジーヌの担い手の1人である佐々木シェフは、さらにその先を見すえています。

 先人たちの功績に真摯に向き合い、進取果敢の精神で新しい可能性を模索し、人々に喜びと感動を提供し続ける。シェフが座右の銘に掲げる言葉は「不易流行」です。「不易」とはいつまでも変わらないこと。「流行」はその時々の変化。時代を越えて求められる普遍性を重んじることと、変化を求め新規性を取り入れることは一見、相反する考えのように見えて、その実、表裏一体。ヌーヴェル・キュイジーヌが宮廷料理に立脚して進化した歴史は、新旧の融合が未知の地平を開拓し、未来につながる不変の価値を新たに創造した、何よりの証左といえるかもしれません。

 「垣根をつくらず技法も解釈も柔軟に変えながら本質を伝えること。そのために思索を費やすこと。他者の評価に一喜一憂せず、信じる道に真摯に向き合うことが成長をもたらすと考えています」

 現在進行形のフランス料理の技術や精神性の伝承を目的に、フランスと日本を、そしてベテランと若手を「たすき」でつなぐように組織された「クラブ・デュ・タスキ・ドール」の活動にも意欲的な佐々木シェフ。彼が率いるPRESQU'ÎLEには、既成概念にとらわれない自由闊達な空気が、確かに満ちていました。








料理長 佐々木康二(ささきこうじ)


岡山県倉敷出身。大阪・辻調理師専門学校を1986年に卒業後、岡山国際ホテルに就職。ルクセンブルク・インターコンチネンタルホテルでの修業を経て、1988年に神戸ポートピアホテルの『アラン・シャペル』へ。日本におけるフランス料理の第一人者でもある上柿元勝氏に師事し、1992年には上柿本シェフについてゆく形で長崎・ハウステンボスのフランス料理レストラン『エリタージュ』へ。後にパリのホテルクリヨンなどヨーロッパでも研鑽を積む。2008年「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」の日本代表に選ばれ、アジア大会優勝と世界大会入賞。同年、神戸ポートピアホテル『アラン・シャペル』へと戻り『アラン・シャペル』閉店後には、同所『トランテアン』の開業にも尽力。2015年10月、大阪・淀屋橋にオープンした『プレスキル』料理長に就任し、現在に至る。



PRESQU’ÎLE

プレスキル

〒541-0042 大阪府大阪市中央区今橋4-1-1 淀屋橋odona(オドナ)2F 電話:06-7506-9147 営業時間:【昼】11:30〜15:00(LO 14:00)      【夜】17:30〜22:30(LO 20:00)




酔鯨 純米大吟醸 万-Mann-

「食中酒」の魅力を最大限に表現した味わい

酒造好適米最高品質の兵庫県特A地区の山田錦。その米だけを使用して酔鯨の醸造技術で醸した『純米大吟醸 万〜mann〜』。その香りや味わいは、最高級な酔鯨の純米大吟醸にふさわしい芳醇で爽やかなキレとハーモニーを生み出し、大人のテーブルをより華やかに満たしていきます。黄金色に広がる収穫時期の米の大地からインスピレーションを受けた金色のwhale tail マーク。その黄金色のパッケージデザインには、酔鯨の最高級酒を表すフラッグシップの日本酒への想いが宿っています。 食中酒として完璧なバランスを酔鯨の技術で追求した これこそが酔鯨という純米大吟醸であり、それは最高級の山田錦を最大限に表現した『ここに極まる、金色(こんじき)の大地』。酔鯨の酒づくりに対するグリット感を込めた上質な香味をお楽しみください。


PAIRING

酔鯨 純米大吟醸 万-Mann-


使用米 / 山田錦(兵庫県産) 精米歩合 / 30% 内容量/720ml 価格/11,000円(税込)





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