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Vo.6 【グラシアニ】フレンチの世界で食の未来を模索



建物は異国の風情ただよう白亜の洋館


明治時代の初期の頃から外国人居留地として発展し、およそ一五〇年を経た現代においても、そこかしこで異国文化が色濃く感じられる神戸・北野の地。歴史ある西洋建築が建ち並ぶ通りを歩いてたどり着くフレンチレストラン「ラ・メゾン・ドゥ・グラシアニ神戸北野」は、白壁とガーデンテラス、そして鮮やかなターコイズブルーの窓枠が目を引く、印象的な外観をしています。

 趣きある白亜の洋館はもともとフランス人貿易商とその家族が暮らしていた邸宅で、建てられたのは明治四一年のこと。店名の「グラシアニ」は、この一家のファミリーネームです。 フレンチの伝統を受け継ぎながら創造性あふれるメニューを次々と生み出す厨房を率いるのは、グランシェフの土肥秀幸さん。フランス・リヨン近郊にある名門レストランで厳しい修業を積み、フレンチの世界をより深く知るためにソムリエの資格も取得するなど、向上心を常に失わない、気さくな人柄の料理人です。









塩気と甘味の新たな可能性を引き出す


 土肥シェフの料理観を端的に表現するなら、自由闊達、融通無碍。地域の食材を大切にしながらもそこに固執することなく、また、和の食材もふんだんに取り入れながら、新旧、和洋が混然一体となった新たな地平を拓き続けています。そんな彼にとって日本酒というジャンルは、旺盛な好奇心をさらに刺激する対象だったのかもしれません。 土肥シェフへのマッチングの依頼にあたって選んだのは、SUIGEI HIGH END COLLECTION 純米大吟醸《万》。口にした実際の感想を、まずシェフは「華やかな香りが素晴らしいですね。ほんのりとした酸味も感じられます」と表現し、続いて「どちらかと言えばフレンチに合わせやすいタイプではないでしょうか」と、相性の良さを言葉にしていました。


 マッチングを思案してしばらくのち。土肥シェフが厨房に立ち皿にのせた料理は、フォアグラのポワレでした。 焼き色をつけたフォアグラを主役に蕪のエクラゼを添え、酒粕のヴィネグレットソース、甘酒のピュレ、炒り玄米のパウダー、金箔があしらわれています。見た目には実にかわいらしい仕上がりの一品ですが、驚くべきは、からすみを練り込んだホワイトチョコレートが盛り込まれていることです。


 「《万》のすっきりとした飲み口の良さは、フレンチ特有の濃厚さに対してもきっと調和がとれるのではないかという期待がありました」と、土肥シェフ。香りと酸味に加えてあと味のキレの良さが、からすみとチョコレートという大胆な閃きの呼び水となったようです。


 魚卵の塩気とチョコレートの甘味は、実は親和性が高い。過去に訪れたイギリスのレストランでキャビアとチョコレートを組み合わせた料理を口にした際の感動から、このアイデアは土肥シェフにとってすでに確証が取れた事実でした。ねっとりと濃厚なからすみを使い、蕪、酒粕、甘酒の甘さを前面に押し出すという手法も、塩気と甘みに対する経験則がベースになっていることは言うまでもありません。正解はただ一つ。それは「料理を口に運ぶ人々の笑顔です」と、土肥シェフは明快に答えます。







モチベーションは旺盛な好奇心と飽くなき向上心


たった一皿の料理からも感じられる土肥シェフのこのような好奇心と向上心は、厨房の外へと自身を向かわせる行動に直結します。今回の企画への依頼を受け、酒造りが どのように行われているのか詳しく学びたいとシェフは、酔鯨酒造 土佐蔵へと足を運ばれたとか。昔ながらの手法を守りつつ、部分的に最新機器を導入するといった柔軟な姿勢には、大いに共感するところがあったそうです。


 この酒蔵見学では、精米後の糠がただ廃棄されるのではなく、家畜の飼料や耕地の肥料に再利用されていると知れたことも、土肥シェフにとっては収穫でした。「玄米を炒ってパウダーにするという着想は、案内いただいた方からお聞きした糠の再利用の話がヒントになっています」 こうシェフは振り返ります。 生産者とのコミュニケーションも大切にする土肥シェフは、畑を訪れて農家の方々から直に話を聞くことも少なからずあります。


 「天気が変われば野菜の出来も当然変わります。その年によって甘味が強かったり苦みが際立っていたりと品質は様々。変化を受け入れながら、創意工夫を重ねて食材のポテンシャルを目いっぱい引き出せるよう、いつも心掛けています」と話すその瞳からは、成長への意欲が十二分に感じられました。




現場の一人として、食品ロス問題に向き合い続ける


 糠を再利用するという酒蔵の取り組みが、土肥シェフの中でなぜ印象深く残っていたのか。そこには、食品ロス問題に対する関心の高さがありました。世界の人口推移を見ると、先進国においては各国軒並み少子高齢化に悩まされていますが、全体としては増加傾向にあります。 一方、地球環境に目を向ければ、異常気象や人為的な自然開発によって海水温上昇、森林枯渇、土壌汚染は加速度的に進行しており、そう遠くない将来に深刻な食糧不足が訪れることは今の時点で明らか。にもかかわらず食品の大量生産・大量廃棄は依然として歯止めがかかりません。世界全体の食品の年間生産量40億トンに対し、実に3分の1に相当する13億トンが廃棄されているという衝撃的なデータもあります。


 解決の糸口となるのは、一人ひとりが「もったいない」という気持ちを持ち少しずつでも行動に移すこと。食の現場に携わる一員として土肥シェフは、自分自身にできることから食品ロス問題に真摯に向き合っています。

 例えば落花生の殻。廃棄する選択肢しかないはずの殻を、シェフはローストして粉末にし、香りのいい調味食材へと生まれ変わらせたのでした。他にも 野菜の切れ端を集めてフュメにしたり、野菜の色素を生かしてオイルに着色したりと、あらゆる固定観念を排除して食材を無駄なく使いきるための試みを続けています。


 「大げさかもしれませんが、料理人は命と健康と人生の豊かさを支えることが仕事だと自負しています。そして食材は、豊かな自然が私たちに与えてくれる恩恵に他なりません。そう考えれば、できること、やるべきことはおのずと見えてくるのではないでしょうか」

 食の今とこれからを確かに見すえながら、土肥シェフは「おいしい料理は美しい」というシンプルな哲学を変わることなく突き詰め続けます。







シェフ 土肥秀幸さん


福井県出身。辻調理師専門学校から辻調グループ・フランス校に。スタジエールでは「ポール・ボキューズ」で経験を積む。帰国後「ベルクール」などを経てラメゾン ドゥ グラシアニへ。ソムリエの資格を持つなど多彩で、コンペディション「RED U-35」ではBRONZEEGGを受賞する実力者。




La Maison de GRACIANI KOBE KIT ANO

ラメゾンドゥ グラシアニ 神戸北野

〒650-0002 兵庫県神戸市中央区北野町4-8-1

電話:078-200-6031

営業時間:【Lunch】12:00 ~ 15:00(L.O.13:00)

     【Dinner】 17:30 ~ 22:00(L.O.20:00)

定休日:月曜日(祝日の場合は火曜日)





酔鯨 純米大吟醸 万-Mann-


「食中酒」の魅力を最大限に表現した味わい


酒造好適米最高品質の兵庫県特A地区の山田錦。その米だけを使用して酔鯨の醸造技術で醸した『純米大吟醸 万〜mann〜』。その香りや味わいは、最高級な酔鯨の純米大吟醸にふさわしい芳醇で爽やかなキレとハーモニーを生み出し、大人のテーブルをより華やかに満たしていきます。黄金色に広がる収穫時期の米の大地からインスピレーションを受けた金色のwhale tail マーク。その黄金色のパッケージデザインには、酔鯨の最高級酒を表すフラッグシップの日本酒への想いが宿っています。食中酒として完璧なバランスを酔鯨の技術で追求した、これこそが酔鯨という純米大吟醸であり、それは最高級の山田錦を最大限に表現した『ここに極まる、金色(こんじき)の大地』。

酔鯨の酒づくりに対するグリット感を込めた上質な香味をお楽しみください。



PAIRING

酔鯨 HIGHEND COLLECTION 純米大吟醸 万-Mann-  

使用米 / 山田錦(兵庫県産) 

精米歩合 / 30% 

内容量/720ml 

価格/11,000円(税込)



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