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Vo.8 【 capi 】〝革新的な調和〞を追求し続ける





「色彩」の観点から創造性を発揮


 例えば紫外線のダメージから肌を守る働きがあるとされるリコピンは、トマトだけではなくスイカやグアバにも多く含まれています。免疫力を高めるβ カロテンの含有率が高い野菜はニンジン、カボチャが代表的で、整腸作用や貧血予防に役立つクロロフィルは、ほうれん草や水菜、ピーマンなどから多く摂取することができます。

 他にもナスやブルーベリーには眼精疲労を助けるアントシアニンが豊富で、らっきょう、にんにく、玉ねぎなどは、食欲増進と血流改善に好影響を及ぼす硫化アリルが豊富です。

 このように、色味が近しい食材は含まれる栄養成分にある程度の共通点があり、調理においても相性の良さを発揮することがあると考えられています。


 今回、訪れた大阪・北新地の「capi」は、お客様をおもてなしする上で“色彩〞を一つの重要なキーワードに捉えるイノベーティブ・フュージョンレストラン。イノベーティブ・フュージョンとは、和食、洋食、中華、フレンチ、イタリアンといった従来のジャンルにとらわれることなく自由な発想で創造性豊かな料理を追求する料理スタイルのことで、スペインのある有名店が標榜したことを皮切りに、2010年代の前半頃から世界的な広がりを見せています。

 同店のオープンは2021年1月。シェフの小川大喜さんは、カウンター席がわずか8席という距離感の近い空間で、お客様との語らいを楽しみながらオリジナリティあふれるメニューを次々と生み出しています。







食材を大胆に組み合わせ、食感にもこだわる


 既成概念的な枠組みをいともたやすく飛び越え、素材と素材の掛け合わせによる無限の可能性を一皿に表現し続ける小川シェフにマッチングを依頼した酔鯨の作品は、SUIGEI HIGH END COLLECTION 純米大吟醸《象》。「キレの良い甘みを感じました。硬水のようなミネラル感が際立っていることも印象的です」と、シェフは口にした最初の印象を語ります。

 マッチングに思考を巡らせ、これまでの経験から浮かび上がったメインの食材は帆立貝、そして和梨でした。《象》の喉越しからイメージされた爽やかな透明感を存分に引き立て、なおかつ料理とのこれ以上ないシナジーを想像して導き出された最適解は、「白」の食材だったようです。


 少量の塩を振って両面にしっかりと焼き色を付けた帆立貝に、スライスした和梨を添えたこの一品は、前菜にうってつけの軽やかな口当たり。ヘーゼルナッツのペーストと乳酸発酵させた梨のエキスを合わせたソースにより味わいに不思議な奥行きが感じられ、また、フレンチにもよく使われるハーブのオキサリスが絶妙のアクセントとして存在感を放っています。仕上げには凍らせたフォアグラをパウダーにして一振り。帆立貝の上品な甘味と和梨の瑞々しい酸味が口中で心地よく溶け合い、ヘーゼルナッツの香ばしさとフォアグラの濃厚な旨味による後味の良さも感動的です。イノベーティブ・フュージョンの言葉通り、すべての食材が渾然一体となった革新的な調和が見事に表現されていました。


 箸を置き《象》に手を伸ばせば、ふくよかな吟醸香とキレの良い辛口の中にある爽やかな甘味も十二分に引き出され、まさに互いが互いを高めあう。そんな極上のマッチングが実現されていたのです。調理においては、食感にもこだわりがあるという小川シェフ。帆立貝に火を通すことで弾力ある歯ごたえを持たせ、和梨の瑞々しさと対比させれば変化に富んだリズム感が生まれます。

 「食感の変化もまた、料理を味わう楽しみの一つと言えるのではないでしょうか」《象》に合ったイノベーティブ・フュージョンの一皿に帆立貝と和梨を選んだ理由を、小川

シェフはこう語っていました。






チャレンジ精神の根底には、師の教えがあった


 小川シェフのキャリアは、山根大助氏との出会いが大きな分岐点になりました。山根氏は、関西イタリアンの世界で特に名の知れた「ポンテベッキオ」を立ち上げた人物です。 小川シェフはご家族で同店を訪れた際に、そのあまりのクオリティの高さに心を打たれ弟子入りを直訴。約8年の間、同世代のメンバーと共に研鑽を積みながら、今につながる料理人としての核を身につけたようです。

 「料理に関する数々の技術はもちろん、業界に身を置く人間としての基本的な考え方であったり、経営を見据えた視野の広さであったり、かけがえのない知識と経験を得ることができました。capi の営業においても、当時のことが大きな財産になっています」と、小川シェフは振り返ります。


 その後もいくつかのレストランで愚直に修行を重ね、いよいよ自らの力を世に問うべく独立を決意。2012年に大阪・高槻で最初の店舗をオープンさせ、北新地への移転に伴い店名を変えて「capi」をスタートさせたのでした。

 店名には、小川シェフ自身のぶれることのない料理観が込められています。ネーミングの由来はイタリア語で「蜂蜜」を意味する「api」と、「山頂」を意味する「cima」から。「蜂蜜」はヨーロッパ世界で古来、「繁栄」のシンボルとされており、絵画作品などでも多く描かれています。


 食事を楽しむゆとりは、豊かであることの何よりの証と言えるでしょう。一人でも多くの方々にそんな豊かさを心から実感できるような場を提供し続けたい。そのために頂を目指して絶えず成長し続けたい。「capi」という店名は、小川シェフのこのような決意の表れに他なりません。「山根シェフに教わったことは数え切れませんが、その土地の食材を大切にすることと、ジャンルに固執することなく挑戦の気持ちを失わないことの2つは、自分の中でも特に大切な軸となっています」と小川シェフ。自身を育ててくれたイタリアンをベースにしながらイノベーティブ・フュージョンの領域に踏み込んだ背景には、師の教えが根底にあったのでした。






〝たった一つの矜持を胸に、創造〞への道を歩み続けたい


 動物性の食材にフルーツを大胆に組み合わせる、和の食材にフレンチの技法を躊躇なく取り入れるなど、小川シェフのスタイルはイノベーティブ・フュージョンを地で行く融通無碍な発想力と確かな技術に根差した実現力が強みです。蓄積された歴史と伝統に敬意を払いながら、あくまで革新的であること、その上で融合・調和を果たすことは、料理人である限り譲れない、たった一つの矜持と言えるかもしれません。


 料理人である父の背中を見て育ちながらも、一度はご両親の勧めもあって宮大工の道に進んだこともあったそうです。しかし、幼少期からの憧れを捨てきれず悩んだ末に料理の世界に飛び込み、厳しい修行を経て今の地位を築きあげた小川シェフが「食」という根源的な喜びを提供するための〝創造〞への歩みを止めることは、決してありません。その道程は、困難であればあるほど今以上にカラフルな輝きを放つことでしょう。








シェフ 小川大喜さん

京町堀「 ラ ムレーナ」、「ポンテベッキオ」を経て、大阪市内のイタリア料理店でシェフを務める。2012 年、高槻市にて「イル キアーロ」を独立開業。2021 年、店名「capi」に改め、大阪 北新地に移転 。現在に至る。






capi -カピ-

〒530-0002 大阪市北区曽根崎新地1丁目10-2 北新地PLACEビル6 階

電話:050-3138-6188

営業時間:18:00~/ 20:45~(一斉スタート)

【土曜日のみランチ】12:00~(一斉スタート)

定休日:日曜・祝日






酔鯨 純米大吟醸 象-Sho-


食事の時間をさらに美味しくする日本酒


口にした瞬間、その料理と共鳴する食中酒。酔鯨は、そんな酒造りを目指しています。和食はもちろんのことイタリアンやフレンチに至るまで、どんな料理にも合わせやすく、食欲という本能的な感情をさらに引き立てる日本酒。それが『純米大吟醸 象 〜sho〜』。酒造好適米「八反錦」ならではの上品なお米の香りや、熊本酵母由来のフレッシュなバナナを思わせる穏やかな香りを堪能でき、口に含むと、綺麗で爽やか、そしてクリアな印象が際立ちます。辛口ながらほんのり感じる甘み、優しさを感じる酸がとても良くバランスが取れており、酔鯨らしいキレの良いあと口と合わせて、お酒に上品さをもたらしている最も酔鯨のスタイルを感じる上質な純米大吟醸酒です。さまざまな食事のテーブルシーンで、この日本酒はいつも一緒に楽しむことができる『マリアージュ奏る、淡麗辛口』。世界の食中酒を掲げる酔鯨のすっきりとしたキレのある味わいをお料理と共にお楽しみください。



PAIRING

酔鯨 HIGHEND COLLECTION 純米大吟醸 象Sho  

使用米 / 八反錦(広島県産)

精米歩合 / 40%

内容量/720ml

価格/5,500円(税込)

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